廣瀬純×仙田満トークセッションinTAU その3
その1、その2からの続きです!
※()内は私の補足や感想です。
仙「全体経費の約3%、3億円が、球場入口のスロープです。今後の高齢化やユニバーサルデザインを考えた時に、来やすい野球場にするためにはそこまで費用をかけてでも作る必要があると思いました。」
仙「スロープの幅は10メートル、20分の1(これは勾配のこと?)、広がり感を演出しています。」
(球場入口につながるスロープ。「外界と隔絶された非日常空間」という演出もあるとは思うが、マツダスタジアムは周りの道から徐々に徐々に球場内に入る。少しづつ緑のグラウンドが見えてくる、という演出をしている。)
仙「マツダスタジアムには、遊環構造を取り入れています。」
(遊環構造を調べてみました。
仙田先生によると、遊環構造とは、子供の遊び空間の構造のことで、以下7つの条件に整理されているようです。このあたり私は全く素人なので参考程度にー
1.循環構造があること
2.その循環(道)が安全で変化に富んでいること
3.その中にシンボル性の高い空間、場があること
4.その循環に”めまい”を体験できる部分があること
5.近道ができること
6.循環に広場、小さな広場などがとりついていること
7.全体がポーラス(直訳すれば”多孔質体”)な空間で構成されていること、穴が開いていてどこからでも入り込めどこからでも逃げられるという状態
なのだそうです)
仙「回遊性のある、遊環構造の空間としてスタジアムのデザインを行い、多様な体験ができる空間ということを重視しました。多様な空間とは具体的にどのくらいかと言うと、約30種ーテーマパークなどのそのくらいの数になるようデザインされているーであり、一度に体験できるのはそのうちの7種くらいと言われています。
多彩なシートや飲食店など、多様な空間であることを重視しました。」
(試合開始前に場内をグルグル回る時からすでに楽しい)
仙「ゲートブリッジは文字通り、スロープから登って行き、球場内に入る時のゲート(門)でありかつ、ビジターパフォーマンスシートにつながる橋(ブリッジ)として機能させるよう設計しましたが、ご覧になった松田オーナーが”ここに席作れば売れる!”と即決され、観戦席としても使うようになりました。(ここで会場笑)」
ゲートブリッジ
仙「球場内のどの位置からでもグラウンドを見ることができるよう、2階席につながる通路(サブコンコース)上からもグラウンドが見えるような角度で設計しています。」
(多分、この辺の眺めのことかな)
仙「遊環構造で回遊性を高め、多様な体験ができるようにすることの他の工夫として、プレキャスト・コンクリート(PC)工法の活用による工期短縮が挙げられます。」
(2007年〜2008年ごろ、様々なブログ・広報などでマツダスタジアム建設の過程を興味深く見ていました。そこでとても興味を持ったのがこの”プレキャスト・コンクリート構造(工法)”でした。)
(コンクリートで建物を作る、というと、素人の私は
”現場で型を作り、そこにコンクリートを流し込む”
ということを想像するのですが、その方法には以下のような問題点があります。
・気温や湿度など、その時のその場所の条件でコンクリートの品質に差が出る
・天候によっては、そもそも作業ができない
・「下」の構造物を先に作り、それが十分に固まってからでないと「上」の構造物を作ることができない
プレキャスト・コンクリート構造(工法)は、構造物を複数のブロックに分け、工場であらかじめ生産し、それを現場に持ち込んで組み立てる、というやり方なので、
・工場内で、理想的な条件下で生産できる
・「下」の構造物も「上」の構造物も一斉にかつ別々に生産でき、それを現場で一気に組み上げることができる
結果、高品質かつ短工期で実現できる。)
(球場内を一周する(円環構造の)コンコースから見た天井(アーチ型の部分=2階内野自由席部分など)など、PC工法で構築されているようです)
(根本的な「考え方」みたいなものは仕事その他にも応用できそうです。)
仙「他にも、球場内を照らす照明は、他の球場では球場の外に独立して建(立)てるが、そうすると球場自体の基礎とは別に照明灯用の基礎も用意しないといけない。マツダスタジアムでは球場自体の基礎から照明灯も建(立)てるようにして後期や費用の圧縮のための工夫をしています。」
仙「以上の工夫により、周りを元気にする建物を作り上げ、環境価値が上がることが大事だと考えています。」